32~3歳の頃、お付き合いをしたのは数ヵ月の間でしたが、今までの恋愛の中で一番の失恋をしました。
相手は自分より一回り上の仕事関係の取引先の人でした。
当時、私は会社の転勤でその土地に足を踏み入れて2年目でした。
仕事以外では友達も居なく、毎日寮と職場の往復でした。
そんな生活の中で、彼が初めて食事に誘ってくれました。
それまで彼とはほとんど話をしたことがなかったのですが、その日をきっかけに彼が橋渡し役として、赴任先の会社の人と話しやすい環境を作ってくれて、人間関係の幅を広げてくれました。
趣味も食事の好みも真逆の人で、これまでお付き合いをした人の中では初めての人種で彼の言動を理解し難いことが多々ありましたが、彼に合わせていることがその時は楽しかったので、自分もその人の色に染まろうと努力していました。
しかし、ある日を境に彼の態度が急に冷たくなりました。
家に行っても居留守を使われて会ってもらえず、最後には「ヒステリックなストーカー女」呼ばわりされてしまいました。
何を尋ねても会えば怒ってばかりで話にならず、修復は無理だと思い私は諦めることにしました。
しかし、理由を言ってくれないのでどうしてそうなったのか全く理解できずに泣いて過ごす日々を送っていました。
後に分かったことですが、理由は単純で「他に好きな人ができた」ということでした。
失恋からの立ち直り
しばらく泣いて過ごす日々を送る中で、新しい彼女の存在を知って、彼女ならいいかと思える人でしたので私はおとなしく引き下がりました。
しかし、それならそうとはっきり言ってくれたらよかったのにと思いましたが、最初のうちは何も言わないことが「彼の優しさ」だと思っていました。
しかし、あることをきっかけに、彼はもしかしたら「アスペルガー」なのではないかと思うようになりました。
アスペルガーについての知識はぼんやりとは持っていたものの、あらゆることを調べているうちに、私の中でそれは確信となりました。
彼の産まれた土地は田舎で閉鎖された環境でずっと育ってきた人でした。
周囲の人や友人からも「変人」の一言で済まされてきていたし、また、勤める会社も自宅の近所で、職場の人も地元採用が大半でしたが、会社の人からは「仕事大好き人間」として見られていたため気付かれなかったのだと思います。
それが分かってからは、これまでの彼の言動の全てに納得することができて、「私に理解することができなくて当たり前だった!」と思えるようになってから、これまで沈んでいた気持ちが一気に晴れました。
私と別れた後、彼は末期の癌だと知りました。
彼女は仕事を辞めて最期を看取ってくれたようで、仮に私がその立場だったらそこまでできたかなと思うと正直できないと思いました。
今ではある意味、別れて正解だったと思います。