それは、私がまだ大学生の頃でした。
必修の授業だった英語の担当講師のことを、とても好きになってしまったのです。
最初の頃は、もう高校生でもないし別に良いのではないか、と自分を納得させつつ、けれど話しかけることが出来ない、という状態がずっと続いていました。先生は、生徒に問題を解かせてる間は、机の間を歩いて回って、英語の間違いを教えてくれると直してくれるのですが、つい過剰に反応してしまい、後になって恥ずかしくなったり、目があってもつい逸らしてしまう、という感じでした。夏休みの長期休暇などは、ことあるごとにその先生のことを思い出す、というありさまでした。
結局一年間、ずっとその先生のことが頭から離れなかったのですが、個人的に話すことは一度もないまま学年末試験を迎え、最後にテストを手渡すことに少し手が触れたのと、目が合って「おつかれさま」と言われたのが最後になりました。
失恋からの立ち直り
それからしばらくは、ずっと、どうして声を掛けなかったのだろう、だとか、もし気持ちを打ち明けていたら先生にも迷惑だっただろうな、ということを考えては一人で悩んでいました。そんな中立ち直るきっかけになったのは、旅行でした。
学生という身分もあったのですが、丁度春休みということをあって、思い立ったままろくな準備もせずに奈良に出かけました。どこでもよかったのですが、新幹線が止まらず、行ったことが無かったので選びました。
私は古墳の大きさに圧倒されたり、山に登ったり、志賀直哉の邸宅を見たり、鹿に触った。一人で色々と回り、ゆっくりとした時間が流れる風景を電車の窓から眺めている間に、心が癒されていくのを感じました。
1週間ほどの旅行でしたが、とてもリフレッシュして、また頑張ろうと思うことができました。